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「おはようございます。」
出社前の誰もいない事務所に挨拶をする。
これが彼の日課だ。これがないと調子がでない。ルーティンだ。
ルーティンって響きがまたカッコいい!と、彼は思う。彼が思っているだけ。
田部 隆之介(たべ りゅうのすけ)はこの会社の事務員をしている。
これといった特技も取柄もない。普通の童貞男子だ。
彼はもう少ししたら魔法使いになれるのではないか?と本気で思っている。
学生の時にクラスの誰かが言っていたのだ。
皆、色んなことに詳しいなと感心していたほどだ。
“悲しくなんてありません!悟りも開けるらしいではないですか!”
と、数少ない友人になぜか自慢げに話すほどだった。まぁ、強がりだが…。
"隆之介"という猛々しい名前を両親からもらったのだが、本人はこの名前と
現状との違いに苦悩し、名前で呼ばれることを嫌がる。
身長は、惜しいことに170㎝を切る。ほんの2㎝足りなかったのだ。
だが、まだ自分は成長期なのだと信じている。
ご飯を一生懸命食べても薄っぺらい胸板には筋肉が付く事がなかった。
夏はなるべく外に出て、日光を浴びているにもかかわらず、色白だ。
最悪赤くなってヒリヒリするだけ。という地獄も味わう。
自分に自信がないため、いつも俯き加減で、黒縁メガネご愛用だ。
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