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取り柄のない自分に浸っていては、今日1日まともに仕事が出来ない。
隆之介は小さい頭をぶんぶん振って、今自分がしなければならない事に取り掛かった。
まずは、掃除だ。彼は毎日事務所の掃除をする。
隆之介の周りの女性は美意識が高い。よく言えば。なのだが…
自分以外には手をかけたくないオーラ全開なのだ。
よって、美意識の高くない隆之介が掃除をするのだ。
「何故ここにつけまつ毛が落ちているのでしょう。」
誰かの忘れ物を拾い上げポツリと呟いた。片方だけ机の下に忘れられていた。
「この席は…あぁ。山野さんですか…はぁ…」
盛大にため息をつき、忘れ物のつけまつ毛を見つめて
どうしたらこのまつ毛が落下するのか不思議に思っていると
「おはよぉーございまぁーす」
今日も美しく完璧な状態でぞろぞろと女子社員が出社してきた。
隆之介はこの女子軍団が非常に苦手だった。
ヒールを履かれてしまっては、身長差もなくなる。
その上いつも固まっているのだ。団体ほど迷惑なものはない。力が増すのだ。
うんざりしながらゆっくりと振り返り
隆之介は笑顔で挨拶した。
「おはようございます。あの、これ忘れていましたよ。」
行き場のなくなっていた片方だけのまつ毛を持ち主 山野 三葉(やまの みつは)に
そっと手渡した。
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