黒のボクサー基本です。

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   お姉さま方の井戸端会議も終わって漸く落ち着いた頃  我が経理部のイケメン上司  杉田 涼(すぎた りょう)が出社して来た。  もっと早く来てくれればいいのに。と、隆之介はジト目で見た。  「おはよう。」  名前の通り涼しげな顔を少し笑顔にさせて、杉田は部下たちに声を掛ける。  「おはよぉございまぁ~す。」  息がピッタリの甘ったるい返事だ。毎日聞いているとウンザリしてくるものだが  杉田は嫌な顔1つせずに頷く。そこもまたイケメンなのだろう。  「今日から新社長が就任されます。経理部は一般の事務も兼ねていますから   新社長のお手伝いもしなければなりません。」  顔同様、涼し気な声で杉田は話し出した。  隆之介はデータの打ち込みをしながら、自分には関係のない話だろうと  手元の書類に集中した。    隆之介の勤める会社は大企業な訳でもないので、経理部が一般の事務職も行う。  電話対応もこなすし、データ入力も行う。秘書的な事も行うので  新社長には我が社の美女軍団の中から誰かを選出するのだろう。  案の定、経理部美意識高い隊がざわざわしだしている。  誰か1人が選ばれることによって、不満の塊がこちらに飛び火しない事を隆之介は切に願っていた。  30代の独身社長にお近づきになりたい肉食美女軍団の火花は凄まじい。  だがやはり、どこにおいても女王様とは強いものだ。  「なら、私が新社長をサポートします。」  極々自然に、それが当たり前であるかの様に、山野が美しい挙手をした。  先ほどまでつけまつげの一件でネチネチ嫌味を言っていた人物とは思えないほど  美しく、堂々とした挙手に、隆之介は女性の本気は恐ろしいものだと  再確認したほどだった。
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