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窓際のテーブル席が、ソファごと、すべて逆さまになっている。食器棚や収納棚の扉は全開になり、中の物が外に飛び出している。
「ちょっと驚いたら、コントロールが効かなくなっちゃって」
「え? ちょっと待って。力が戻ってから、少し経ったよね? ええ? ひょっとしなくても、まだ力が安定してないの?」
「そうなんだよ~。びっくりした時とか感情が大きく動くと、勝手に発動しちゃうんだよ~。……あ、なんとか落ち着いた」
腕の中にまとめた食器類を、カウンター上に並べていく五樹。店内に入りながら、風見は疑問を続ける。
「こんな調子じゃ、表に出るのが怖いんじゃないの?」
「ん~~~……」
顔をしかめ、五樹はうなる。でも、しかめっ面は長くは続かない。
「仕方ないってあきらめてるかな」
「え?」
「だって、能力者だし。みんな似たような経験してるんでしょ? それに、外に出なきゃ生きていけないじゃん」
風見は目を丸くする。思考は実に子どもっぽいが、根本的なことを五樹は捉えている。
能力者の運命を受け容れきれなくて崩壊した人間もいるっていうのに、この子は………。
数日前の、寿司屋での出来事が思い出される。
―だいじょぶだいじょぶ。こいつ、気にしないから
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