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「………スイーツが、クリームソーダしかない………」
茫然とした呟きに、歩き出そうとしていた風見はコケそうになる。
泣きそうなくらい深刻な悩み事相談をしに来たのか、と一瞬でも思ってしまった自分が恥ずかしい。
「えぇと……」
咳払いをしつつ銀盆を持ち直し、風見は改めて五樹を見つめた。
「甘いものが食べたかったのかな?」
「……パフェの気分………。喫茶店なのに、メニューにパフェがないってどういうこと?!」
五樹は小さなメニュー表片手に抗議する。
「スイーツ目当てに来るお客様が少ないから表記してないだけで、希望があれば提供するけど……ごめんね。生憎と、いまフルーツを切らしてて。少し待てるなら買い出しに行くけど……どうする?」
一瞬その瞳に希望の光を灯らせた五樹だったが、ごめんね以降の言葉を聞いたら、再びその表情に絶望の色を浮かべた。くしゃくしゃっと自分の髪を掻き回し、あああ~、とカウンターに突っ伏す。
「……まあ、いいや。クリームソーダちょうだい」
力を失った声があまりに哀れで、風見は助け舟を出す。
「普通のホットケーキミックスから作るパンケーキで良ければ……」
「え?」
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