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16の時、生まれて初めての恋をして、それを相手に告げたことがある。冬の早朝の、誰もいない音楽室の前で待ち伏せをして、ただ、好きですと告げた。
相手は生徒会書記をしている、2学年上の先輩だった。私の名前どころか、顔だって覚えがなかっただろう。突然の告白に驚いたように、一瞬だけ目を見開いた。まだほんの少しだけオレンジ味を帯びた太陽の光がその横顔に影を作った。それを近くで見れただけで、自己中心的な私の胸はただときめき、そして、深く後悔した。
「ごめんなさい」
うつむいて、絞り出すように言った。
「気持ち悪いですよね、女にこんなこと、言われたら」
彼女は大人びた声で返した。
「ううん。嬉しいわ」
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