遺言書の謎

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 邸宅、と呼んでもよい大きな日本家屋だった。重そうな瓦屋根が長い塀の上に見えていて、クルマが通れそうな木製門扉は固く閉じられていた。  窓村、という力強い毛筆体の表札がかかっている。  インターホンで来訪を告げてから二分がすぎた。お屋敷故、門まで出てくるまで時間がかかるのだろうが、もったいつけてどうする、と先野は苛立つ。  依頼内容はあらかじめ聞いていたが、改めて依頼者宅まで来たのは、確認しておきたいことがあったからだった。  三分待つ前に、門扉の横の通用口が開いた。70歳ぐらいの老婦人が現れた。茶色に染めた髪をアップでまとめ、ゆったりとしたベージュ系のトップス。化粧品の匂いが強い。若い頃はさぞかし美人で評判だったろうと思われた。
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