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「どうも、新・土居エージェントの先野と申します」
用意していた名刺を差し出す。
老婦人は名刺を受け取ると、先野と見比べる。白の上下のスーツに紫のシャツ、赤いネクタイという出で立ちの先野を胡散臭げな目で舐めるように見て、意味ありげな小さなため息をもらし、
「窓村の家内です。どうぞ、こちらに」
と、招きいれた。
手入れの行き届いた前栽の前を通って母屋に至ると、広い玄関から広い居間に通された。十六帖ほどの和室には、先野の予想に反して四人もの男がいて、背の低い黒檀のテーブルを囲んでいた。
しかもただならぬ殺気のようなものが立ち込めている。
門で先野の応対をした老婦人が、先日、80歳で病死した窓村家の家長夫人である。
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