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「ここに至ってなお疑って信じないなんて、ありえないでしょう?」
「さてね。世の中、そんな物分かりのいい人間ばかりじゃないからね。いかにも、ぼくは父の実の子ではないです。なんせ、犬ですからね」
「どうして窓村さんの三男になりえたんですか?」
わからないことだらけで、正直、どこから質問してよいか迷ってしまう三条だった。
「五十年ほど前、ぼくはこの世界から弾き出されてしまったんです。運よく窓村良松のペットになれて、ぼくはたいそう可愛がられましたが、その後、いつかこの世界へ帰るために人間の赤ん坊の姿になって、窓村家の子供にしてもらった。以来、人間のままだったんですが、父が亡くなってやっとこの世界に帰る方法がわかったんです、あの遺言書でね。ぼくが父の事業に関わらないで画家になって、父は面白くはなかったろうけど、最後には帰るのを許してくれたようです。でも、同時にミヤコの脅威が現実のものになって、またぼくはこの世界から弾き飛ばされてしまう。今度は締め出されるだけではすまないでしょう」
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