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三条は、先野がミヤコを連れていっしょに各地の役場を訪ね回っていることを知らない。そしてついに突き止めて、こちらに向かっていることも。
「ともかく、あんたもいつまでもこんなところにいるわけにもいかんでしょう。すぐに元の世界へ戻りましょう」
そう言って、優元は三条の手をとる。
「さあ、こちらへ歩いてください」
山田西小学校跡地。すでに廃校となったこの敷地が遺言書にあった土地であった。ところが、そこは何人かの共同所有地で、遠い昔、ここに学校が建てられることに反対だった地元農民が土地を共同所有して阻止しようとしたか、あるいは借地料を目的としたのか……と舞瀬村役場の職員は推測したが、なにしろ50年以上も過去の話であり、当時のことを知る当事者はひとりも生存していなかった。土地の権利を引き継いだ遺族にはあとで話を聞くとして、問題の土地を見ておこうと現地に向かった先野とミヤコであった。
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