遺言書の謎

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 裸一貫から事業を興し、一代で巨財を築き上げた窓村氏には三人の息子がいた。先野の目の前にいるのがその三人で──。  跡取りであり、現在、窓村グループ会社を取りまとめる窓村ホールディングスで社長を勤める長男、竜栄(りゅうえい)、50歳。教育のたまものか、しっかりした顔つきをしている。先野に遺言書をわたしたのがこの男だ。  同じくグループ会社の一つであり、基幹業務を担う窓村商事の副社長にすわる次男、剛覇(ごうは)、46歳。鋭い目つきは、寄らば斬るぞとの覇気を感じさせた。  三男はグループ会社に勤めていない。というか、会社員ですらない。洋画家をしているという、優元(ゆうげん)、43歳。変わり者と一族から揶揄されているが、三男故のしがらみの弱さからか、自由に生き、毒のなさそうな顔をしていた。
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