4.遊佐忠仁の事情

2/4
2376人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
遊佐忠仁は完璧なイケメンである。 それは完璧に整った外見もさることながら、眉目秀麗、才色兼備という言葉が全く違和感なく当てはまる内面も完璧なイケメンなのだ。 だが、完璧すぎるイケメンは意外ともてなかったりする。 隣に並ぶには並大抵の女子にはハードルが高すぎて、寄ってくる女性はやたら自信過剰な遊び慣れたタイプか、自分のものを自慢したがりの自己主張の強いタイプのどちらかばかりで、対人関係には子供の頃から苦労してきていた。 それでも、人嫌いになって他人に冷たくあたるとか、コミュニケーションをとらずに引きこもりになるとかもなく、人当たりのいい立派な大人になったのは、最早天が与えた二物も三物もの中に性格のよさもあったからとしか言いようがない。 そんなキングの中のキング、完璧すぎるイケメンの遊佐が、ちょっと背が高いだけの平凡な大学生、しかも男である堀越をメロメロに好きになったのには、それなりに理由があった。 そのとき、遊佐は風邪で弱っていたのだが、前述のとおりあまりにも完璧すぎる遊佐なので、風邪を引いているぐらいで心配してくれる人が回りにいなかったのである。 従って、遊佐にとって、それがたとえみんなに配っている試供品であっても、心配してマスクをくれる堀越は天使のように見えたのだ。 更に、遊佐は身体もその完璧な顔にふさわしいスタイルで、185センチを超える長身は、ひょろひょろモヤシ体型の堀越とは違って、細マッチョな鍛え上げられた肉体の持ち主なため、大抵の人からは見上げられながら話をすることになるわけで、その距離感がなんとなく遊佐の孤独感を強めていたりしたのだけれども、堀越は遊佐より数センチ低かったとはいえ、そう変わらない目線で話ができたのがまた強烈な親近感につながったりしたのかもしれない。 結局のところ、人が恋に落ちる理由なんて、そんな些細なことが原因なのだ。 そんな些細な幾つかの理由で恋に落ちた遊佐は、言い寄られることはあっても自分から言い寄ったことは初めてで、遊佐の整った顔と甘い低い声に翻弄される堀越がまた赤くなったりはにかんだり、遊佐のフェロモンに誘発されて変な色気まで出すものだから、ただでさえ盲目になってる遊佐はドツボにはまっていってしまい。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!