水のない部屋

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 ジョンソン、水がほしい。ジョンソン、水がほしいよ飲みたいよ。そっちの世界では水なんか飲まなくていいんだよね。食べなくていいんだよね。意味なんか考えなくてもいいんだよね。今から行くからね、ああ、水がほしい。水が飲みたい水がほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしい。  私はあまりの水のほしさに、のっそりとベッドから立ち上がった。生まれて初めて立ち上がったような気もする。黒っぽいカーテンがほんの少し開いており、そのすき間からかすかな光がこぼれだし私のことをちくちくと突きさしてくる。頭ががんがん痛むしふらふらしてまともに歩けない。床に倒れこむと四つん這いになってドアのほうへ向かって貞子歩きをする。  何でこんなことをしているのかさっぱりわけがわからいのだけれど、とりあえず水が飲みたいから仕方がない。水が飲みたい。とにかく水が飲みたい。むしょうに飲みたい。  もう、ジョンソンのことさえどうでもよくなってきた。水を飲まなくていい世界に行く意味もわからなくなってきた。水がなくてどうするのだろう。  ドアの向こうに水があるのかも忘れてしまったし、実際ないのかもしれないけれど、この部屋にいるよりはずっといい。水に近づきたい、水に少しでも近づきたい。あたしの右手と左手と右足と左足とお腹と背中と心臓と肺と全部が水を欲している。  あのかごの中には鍵が本当に入っていたのだろうか。 (了)
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