隔離された空間

10/100
前へ
/100ページ
次へ
「それでも俺達が勝つ為にはその方法しかないんだ。お前が満月と仲が良いのは 知っているが諦めてくれ」  花火の苦しげな表情を王様は寂しげな顔で笑みを浮かべて、顔を辛そうに 歪める花火の頭に手を置いた 「……なぁ花火、コイツだって本当は仲間をこれ以上失いたくないと思っている んだ。だが今回の敵はそうは言ってられない」 「王子……」 「そうだろ王様。ほらお前の口で隠している本音を言ってやれよ」  王子は黙り込む王様に肩をトンッと軽く叩いた 「俺だってな大切な仲間を見捨てたくはないさ。だがこんな世界になった今では  そんな綺麗事言っていたのではな、助かる命も消えてしまう」  花火は悲しげに揺れる王様の瞳を見た。その様子に花火は大きく目を見開いて 一瞬動きを止めた 「……分かりました。でもオレは満月達に危険が迫ったら助けに向かうと思います。 これだけは王様の命令であっても譲れない」 「そうか」  花火の表情には曇り一つなくはっきりと王様に告げる。そして満月のように頭を 軽く下げて早足でその場を去っていく。その後ろ姿に「ごめんな」と王様は小声で  呟いた 「お前は昔も今も弱いままだな」   「それは王子お前もだろう」 「そうかもしれないな」  王様と王子は見慣れてしまった真っ暗で星一つ見えない空を見上げる。その空 には世界を照らす赤い満月が自分達を嘲笑うかのように怪しく光輝いていた    戦闘開始時間まで残り五分 「……おれ達は守られないと殺される弱い集団じゃないし」   「まぁ満月君落ち着けってー」  満月は先程の王様達の話を遠くから聴いていた。そしてその内容を聴いた満月は 不機嫌そうにため息をついていた。そんな満月に楽しそうに少し背の高い茶色の髪 の少年が背中から体重を掛けて抱き着いていた 「うっ……体重掛けないでください重いです春先輩」 「えー? そんなに重い?」  そう言いながらも笑いながら体重を掛けてくる春の腕を空いている腕で パシパシっと数回程叩けば、背中から掛かる重さが消える 「ごめん、ごめん」 「ホント春先輩はこんな時にでも楽しそうですよね」 「そりゃあ……楽しまないとこんな世界ではやっていけないしね」  満月の問い掛けに笑みを浮かべて返事をかえす。その返事に「そうですね」と 言葉を返した
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加