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花火に白い服を乱暴に掴まれた黒髪で紫色の瞳をした満月より幼い男の子を
片手で満月の前へと置く。その子供を見て満月は顔を引き攣らせながらも、
無気力に座り込む子供の前に渋々と座りため息を付いた。
「まぁ九十九回目の召喚者で疲れるだろうけどよろしく頼むわ。残りはオレ達
で分担して終わらせるからさ」
「仕方ない、やるか」
満月は自分の親指を噛み切り血を溢れさせる。その溢れ出す血をしばらく
見つめて、親指全体が赤く染まるぐらいになるまで放置する。その後、子供
の首に血で染まる指を近付けて首元を汚して呪文を唱えた。
「--この魂は悪魔の血により穢され、神の元へと帰る事はかなわない。この身
は血の主によって魂は縛り付けられる」
唱え終われば血で汚された首が光、細く赤い輪が子供の首に出現する。その
瞬間、満月の体に鋭い痛みが走り視界に真っ赤な血飛沫が飛び散った。
「え……」
「はっ? 一体何が……」
満月は呆然と血で汚れた自分と契約を結んでいた血に濡れた子供を呆然と眺める。
そんな満月の横で同じ作業をしていた花火は突然の出来事に動きを止めていたが、
頭の回転が追い付き、状況が飲み込めた花火は呆然としている満月の方を向いて
肩を揺らして意識を自分の方に向けさせた。
「満月ッ大丈夫か!?」
「……あ、花火。何かおれのせいで、花火も血で汚れちゃったね」
そう花火に問い掛ける満月の片方の手は皮膚が所々裂けて真っ赤な血が溢れて
ポタポタと赤い雫が床へと落ちて染みを作っていた。
「いや、それは構わないけど。それ痛くないのか?」
「--すっごく痛いに決まってる。こんな傷、久しぶりだしね」
「満月は最近魔物と戦闘してないもんな……てか、早く傷の治療してこいよ。
王様が満月の事気がついて聞いてきたら説明しといてやるから」
花火はまだ、ぼーっと座り込んで自分の手を見ている満月の腕を引っ張り
立ち上がらせて背中を後ろから押して部屋から追い出す。そしてようやく傷の
手当てをしに歩き出したのを確認して持ち場に戻り、満月に任せた魂を観察し
始めた
「……満月のやり方はあってるし、成功している。じゃあ何であんな拒絶反応
みたいな事が起こったんだ?」
「満月が負傷した原因として考えられるのは、召喚者の魂に満月の力が負けて
しまったんだろうな。だから足りない力を血で支払われた」
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