隔離された空間

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「どうした? 花火。まだ何かあるのか」 「治療室の扉を破壊して飛び出して来たんだ。なのにオレは扉から出る前に片付け をしてから来いよって満月に言って出た。オレは扉について言った訳ではないけど 満月の性格なら……」   「満月は真面目だからな。そんなに気になるなら今から戻って様子を見てきたら どうだ?」   「いや、それはもう一度戻るのは少し面倒かなと」    王様から目を逸らした状態で話続ける花火に呆れた表情で見つめる。そんな花火 を観察していた王様は通路から満月と…… 「おい、誰だ。傷を負った仲間に壊れた扉の片付けをさせた馬鹿者は……」  召喚の間に怒りを含ませた声音が響き渡った。 「何か王子はご機嫌斜めだなぁ。折角の綺麗な顔が台無しになってるぜ」  満月の腕を握り不機嫌そうに顔を歪める長い黒髪を持つ青年、王子と 呼ばれた人物は王様の声に反応を見せず、召喚の間を見渡していた 「アイツか……花火、俺の近くに来い」  花火は名を呼ばれ、王様の後から現れてゆっくりと王子と満月の近くへと とぼとぼと歩いていく。そして目の前までやって来た、花火を両腕を前に 組んで見下ろした 「ねぇ王子、おれ別に気にしてないんだけど」 「ダメだ、そういうのは一々教え込まないといけない。それで花火、何故お前の 馬鹿力で破壊した扉を放置したまま満月を置いて出て行った?」 「……それは」  花火は王子から伝わる刺々しいオーラに中々言葉を発する事が出来なかった。 それは周りも同じで、騒がしかった空間はいつの間にか静まり返っていた。 満月と王様以外は…… 「満月、血は止まったか?」 「んっ」  満月は赤い染みが付着していない手の包帯を王様に前に出して見せる。 王様はその出された手を傷付けない程度で触り、満足そうにうなずいた 「これなら満月も魔物退治に参加出来そうだな」   「まぁおれが参加してもあんま役に立たないけどね。能力は戦闘向きでは ないから」 「いやいや、役に立ってるぞ。満月が居れば隠れている魔物が姿を現して近付いて くれる」  そう笑顔で告げる王様に満月は溜息をはいた。そして王様は満月から視線を ずらして花火と王子の方へと意識を向けた
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