隔離された空間

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「おれは、魔物が寄って来る能力なんて欲しくはなかったけどね」  意識を逸らした王様や周りに聴こえないぐらいに小さく独り言を呟く。その後 自分の事で話し込む二人へと顔を向けた 「えっとオレは満月に扉まで片付けさせるつもりはなかったんです。本当に……」 「だが俺が治療室の部屋の前を通り掛かった時、満月は壊れた扉の片付けをして いたぞ」 「……それはその俺の言葉が足りなかったせいです」  満月は花火が王子に恐怖しながら話している事に首を傾ける。その様子に 気付いた王様は、少ししゃがみ込んで満月の耳元に近付く 「花火は王子の放つ殺気に恐れているんだ。ほら満月も周りを見てみたら 分かるだろう」  王様に耳打ちされて召喚の間にいる仲間達の方へと意識を向ければ、花火と 同じように恐怖を感じている仲間の姿があった 「そんなに恐ろしいかな。王様も王子が怖いの? 普通に見えるけど」 「全く恐れなど存在しない。俺はお前達の王だからな」 「あぁそういう事。それなら王様が恐怖がないのも納得したけど……おれは何で みんなと同じようにならないの?」  満月は、ふと自分に疑問を持ち王様へと問い掛ける。 「それはな、その身に宿す悪魔の地位が俺や王子と同じぐらいの実力者で あるからだ」 「そうだったんだ……おれ今まで自分の中に居る悪魔について何も知らなかった」 「別にそれは構わないだろ。俺は立場上お前達の事を把握しているだけで、 多分満月のように知らない奴なんて沢山居ると思うぞ。さてそろそろ魔物退治 にも出掛けなくてはならないから、花火と王子との話を終わらせるかな」  王様は満月の肩を一度軽く叩き、まだ喋り続けている二人へと向き変える。 「王子、花火は満月の血が止まらないのを焦り俺に助けを求めに扉を普通に   開ける余裕すらなく全力で俺の元へと走ってきたのだ。そのぐらいで許して やれ」 「……本当かその話」 「あぁ本当だ。俺の元へと来た時の花火は冷静さを失っていたからな」 「そうか……花火そういう理由なら早く言えばよかったんだ」  王様の言葉を聞いた王子は殺気を一瞬で消して、表情を緩めて息をはいた。 そして殺気が解かれた事によって周りの緊張した空気は元へと戻った。
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