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「まあそう焦るなって、な?」
私の前に立った彼が呟く。
「俺はあんたと殺りたくないし、そっちだって痛手だろ?その子を置いていきなよ。」
ステファンが振り返る。
「何言ってんの?俺と勝負するってこと?こいつをかばいながら??」
困惑した声。
「5分すれば部下が来る。」
ーそれとも俺が5分持たないと?
将軍が不敵に笑う。
ステファンはその場で考え込むように立ち止まった。
そして何かに納得したように静かに頷くと、軽く手を叩く。
その瞬間、私の胸のあたりがひかりだし、さっきの光の玉が出てくる。
再び戻ってきた自分の強すぎる魔力にふらついていると、ついさっきまでそこにいたはずのステファンの姿がかき消えていた。
「またいつか近い未来に必ず迎えに行くから、その時まで待っててね」
歌うような声が辺りに響く。
「消え………た…」
ほっとすると同時に膝がぐらつく。
が、完全に地面に崩れ落ちる前に誰かに抱き起こされる。
顔を上げて確認する気力もない私の目の前に広がるのは、黒と紺を足して2で割ったような世界。甘くて、危険な匂いのする、せかいだった。
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