後妻ビジネス 180925

1/6
前へ
/6ページ
次へ

後妻ビジネス 180925

 患者の名前は加藤五六といった。  78歳。元不動産会社社長。  矍鑠(かくしゃく)としている。何も悪いところはない、と思えた。  「ね、先生」と、患者の娘さんが言う。「認知症出てますよね?」  いや出ていない、と俺は思った。思ったが、こういう場合は出ていると言った方が得だ。何が得か。うちの病院が得だ。  「そうですね、出ていますね」と俺は答える。  「ほらね」と娘さんは言う。  患者本人である爺さんは唖然とする。  「ですよね、先生?」と娘さんが被せてくる。  そうだ、そうですよ。お陰で入院患者を一名増員できる。225万円/月の売上増。有難い。なんと協力的な娘さんなんだ。その時俺は彼女に感謝したのを覚えている。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加