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「そうだっ、雪に自慢しちゃお!かなりのレア武器とったーって」
未だ興奮冷めやらぬ私は、そのまま友人へと報告することにした。
彼女とはゲーム内でもフレンド登録しているから、ログインしているかどうかはフレンドリストを見ればわかる。しかし、生憎彼女はログインすらしていないようだった。
「んー、いないかあ。メールでもいいけど、そこまでして自慢することでもないし……うーん……」
始皇帝の剣、とは騎士の職業を選んだ者ならば誰でも手に入れたくなるという幻の一品だ。
“始皇帝の墓”というダンジョンの深層部に生息するモンスターが超低確率でドロップする――という情報だけを頼りに狩り続けていたものの、実際に手にした者は少ないらしく、本当に存在しているのかすら確認できていない。そのため私も半分諦めかけていたのだが、一週間目の今日、奇跡的にも手に入れることができたのである。
この喜びを誰かと分かち合いたいと考えるのは、いたって普通のことだろう。
いや、うん、私だけかもしれないけどさ。
「琴葉ー!あんたいい加減ゲーム止めて降りてきなさいよー!ご飯よご飯ー!」
階下から、母親の声がする。
そっか、もうそんな時間だったのか。時間が経つのは早いものだなと、しみじみ思う。
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