真夜中の侵入者

ゆーたいりだつ？

　だめっ！！それだけはっ……
　必死にあがく私に、ガツンッと無慈悲な鉄槌がくだる。

　二度寝って、すごく気持ちいいよね。なんていうか、やってはいけないような気がするんだけど、でも私はやってやったぜ！っていう、しょうもない優越感があるところがさ。だからいつもなら、休日は目覚まし時計が鳴ったって絶対に起きないんだけど……今だけは別。なんか、妙に頭がふわふわしちゃって落ち着かない。寝てるあいだにベッドのへりにでも頭ぶつけちゃったのかなあ。私、寝相悪いからなあ。

　窓の外はまだ暗い。今日って何曜？日曜？うわー、夜明け前に目覚めるなんてショック。休日は寝だめするためにあるのに。とりあえず、ホットミルクでも飲んでこようかな。それでも眠くならなかったら、本を読もう。昨日買った、大好きな作家さんの分厚い新刊本。読みだしたらなかなか止まらなくて、ついつい夜更かししちゃったんだよねー。あ、眠りが浅くなった原因ってこれかも。おもしろい本は就寝前には向かないなあ。でも、読む！もう気になって頭が冴えてきた！いいじゃない、休みなんだから。眠くなったら昼間に寝れば！

　そうして、ベッドから起き上がろうとして、違和感に気づいた。
　あれ？かけ布団、かぶってないや……
　それどころか、ベッドに寝てもいなかった。
　……浮いてる！宙に！
　なにこれ、どういうこと！？

　私の体は、ベッドの上空約1メートルのところにふわりふわりと浮かんでいた。まるで、ヘリウムガスが抜けかけていてそれ以上高く飛べない風船みたいに。でももっと残念なのは、その下に布団をかぶって眠りこけている私の体があったことだった。
うそでしょ、この状況……幽体離脱！？
　大混乱中の頭でがんばって考えてたら、体がふらりふらりと不安定に回転し始めた。あ、体っていうのは、このふわふわしている体のほうだけど。待って待って、私、こういう胃がひっくり返る系のアトラクションは苦手なんだってば……

　気持ち悪くて思考停止したところで、回転は止まった。な、なるほど、こういうシステムなのか。試しに体の重心や手足に意識を集中させてみたら、思い通りの動きができるようになった。私はゆっくりと直立の姿勢を保ちながら、見事自分の部屋のベッドわきの床に着地したのです。イェイ！