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……ちがった、問題は全然解決してなかった。ベッドの中には、静かに横たわる自分の姿。あまりにも安らかな寝顔で、絶対に目を覚ましそうにない……永遠に。
私の体は、息をしていなかった。
な、なんてこった……幽体離脱じゃなくて、まさしく、魂が抜けちゃった状態……死んだってこと?この、私が?
そんな、まだやりたいことがたくさんあったのに。友だちとたくさん遊んで、おいしいものたくさん食べて、百万回の恋をして、最終的には愛する夫とたくさんの家族に囲まれて幸せな最期を迎えるはずだったのに……
いや、そんなことより、私はあの本を最後まで読みたかった!このままじゃ続きが気になって、死んでも死にきれない!!
おっと、またぐるぐる回るところだった。気をつけなくちゃ。
私はあの読みかけの本(なぜかタイトルは思い出せない)を探した。たしか、寝る直前まで読んでいたから、いつもの習慣で枕のわきにおいておいたとおもうんだけど。そうすると夢の中で続きが読めそうな気がするじゃない?まあ、実際そうなったことはほとんどないんだけどね。
……おかしいな。枕のわきにはないみたい。私は布団をはがして、自分の冷たくなった体を転がし、本がないか確かめた。けど、やっぱり見つからない。
念のため、ベッドの下や周辺、さらには机の上や本棚も、思い当たるところは全部探してみたけれど、あの本はどこにもなかった。
なにこれ!どういうことさ!?
自分が宙に浮いてると知ったときより何倍も混乱して、腹が立った。
どうしよう……早くしないとお迎えが来ちゃうかもしれないのに。
おかしなことはまだある。私はどうして死んだのか?本来はこっちを先に考えてしかるべきだけど。寝てる間に死ぬような持病は持ってないし、地震でものが落ちてきて埋もれたわけでもない。
それから、死因に比べればささいなことかもしれないけど、こんなに続きが読みたいと思っているあの本のタイトルも内容も、なぜだかまったく思い出せない。
うーんと考えこみながら、逆さまに自分を見下ろした。もうこの変な体勢に慣れてきたみたい。
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