0人が本棚に入れています
本棚に追加
そこでふと、私の死体(いやな響きだなあ)のおでこに、憶えのない傷跡があることに気づいた。近づいてよく見ると、かすかに赤くはれていた。こ、これは……打撲のあと?
じゃあやっぱり、何かに頭をぶつけたのかな?たとえば、ベッドのフレームとか。だとしたら相当間抜けな死に方だなあ。うわぁ、誰も見ないで!!
恥ずかしくてパタパタと上下の浮遊を繰り返していると、ギシ、ギシ……と押し殺したような足音が聞こえてきた。こっちに近づいてくる!
私は一瞬にして、むごたらしい想像をした。一家全員、真夜中の侵入者によって殺害されたのだ!そいつは何か強力な鈍器を持っていて、ひとりずつ、恨みの弱い順に家族を殴り殺していく。最後に、本当にちゃんと息の根が止まっているのか、もう一度見回りに来ている……もしも生き残った目撃者がいたら、逃亡が難しくなるからだ。
突飛な想像だけれど、打撲のあとを見た今、私には確信があった。重たいものでゴツンと殴られたような記憶が、うっすらよみがえったから。
やばい、どうしよう、殺されちゃう!
……いや、待てよ?もう死んでるんだった。それならいっそ、殺人鬼の顔を覚えて、末代まで呪ってやろう!やり方よく知らないけど。
足音が止まり、ノブがひねられ、ゆっくりとドアが開く。
誰だ、私を殺した犯人は……
「こっ、こはる!?」
「あれ、起きてたのお姉ちゃん?」
パジャマ姿の妹の小春が、小脇に本を抱えて立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!