狂人志願

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 そして、僕の他に、クラスには後二人ほど余り物の生徒がいました。  一人は金森くんという生徒で、何をやっても卒なくこなす代わりに、何をやっても中途半端にしかできないという器用貧乏を人の形にしたような少年でした。  彼は中学に上がってから、吹奏楽や、陸上や、美術や、さまざまな部活に入ったはいいものの、どれも途中で飽きて早々に辞めてしまうほど飽き症な性格でした。別に才能が無いというわけでもないのに、やる気が続かないためにすぐに物事を投げ出してしまうのです。そんな風でしたから、真面目に部活をしている生徒たちからは呆れられ、結果的に教室でも孤立していくのでした。  もしも彼が何か一つでも部活や勉強に打ち込めば、余り物になどならずに済んだだろうに、と今でも思います。  そして、もう一人はというと、こちらはどう頑張っても余り物になるしかないという生徒でした。  名前は井之村くんといって、一言で彼を表すなら落ちこぼれというのが一番適当でしょう。本人は頑張っているつもりでも、勉強でも、運動でも、何をやったところで平均以下の結果しか出せないという哀れな生徒でした。それも、ずば抜けて成績が悪いわけではなく、仮にも努力しているだけあって学年の最下位だけは避けているので、かえってその凡庸さを強調するようでした。
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