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「何、見てんだよ。ババア」
それでも立ち去ろうとしない知らないおばさん。気に食わないから声を荒げば、逃げるようにどっかに消えた。
「ゆうくん、言い方」
夏越が心配そうに言うが、口元が笑っている。本気では心配していない。茶化す仕草だ。
「知り合いか?」
知り合いだったらめんどくさい。関係を問い詰められても、夏越と俺は褒められるような立派な関係じゃない。
「ううん、知らない人。じゃあね、また明日」
夏越は俺しか見えていないように見えた。
「ああ、また明日」
また夏越の家に来る――……その日が訪れることは無かった。
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