3.拗らせた女

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3.拗らせた女

──────10年後。 「母さん今から町内会の寄り合いに行ってくるから、ご飯勝手に食べててね。あっ、それと・・・」 仕事から帰って来た私に、母がそう言って出て行った。 自分の部屋に入ってドスンとベッドにダイブする。 母が、それと・・・と言って続けられた言葉に絶句したからだ。 "宗ちゃん、今度結婚するんだって~。何かお祝いしなきゃね" 枕に顔を埋めて、溢れる涙を吸い取らせた。 そっかぁ…、宗太は10年間動いてたんだ。逆に私は10年前のあの瞬間から動いていない。それよりももっと酷くなった。後ろ向きな考えばかり浮かんだからだ。 タイムマシンに乗って、しらたきは食べるなと言いに行くなどと現実逃避の夢を見ていた。 そして拗らせた女は、性格も変わった。明るい性格だったのが、ある人物だけには陰気な女になった。 宗太が向うの道から来るのが見えたら、猛ダッシュで逃げた。 社会人になっても、宗太が会社に行く時間よりだいぶ先に出て仕事をした。 そんな私を仕事大好きな人間と誤解した上司。 その結果、25歳で私を主任に大抜擢してしまい、今や部署を引っ張るキャリアウーマンになってしまった。
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