おさんぽ

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「ホントダ!シロイオビミタイナミチガ、テンニムカッテノビテルヨ」 本当はこの道は霊体の者しか見えないのですが、ラッシュはいつもみやといる身。磁石の力が乗り移るように、ゴールデンレトリバーのお嬢さんにも見えたのでした。 「よし、では行こうぞ」 意気揚々と一人と一匹は白い道を進んで行ったのでありました。 一本道を登ったかと思えば、いつのまにか広い道に合流していました。 道路は両端が雲の壁になっており、そこを行くのは学生もサラリーマンも年寄りも子供も、さまざまな人々が亡くなった直後の姿で、せかせか行くではなく一定の歩行速度で、遥か向こうにある三途の川を渡り輪廻転生の輪をめざすのです。 もちろん一人と一匹は、そこまで歩いてゆく気はありません。適当に面白そうな場所を見つけると、その近くの墓場で降りるつもりなのです。 乗り口と共に降りる事もできるので、ここは高速霊道と呼ばれているのでした。全然高速ではありませんが。 「どうじゃラッシュどの。邪魔は入らぬしこの道はなかなか快適であろう♪」 「エエ、ホントニ……」 みやは上機嫌。ワンコお嬢様も、うなづいていたのですが…。 「ア、アレッ?」 突然お嬢様の足が止まりました。 「おや、ラッシュどの、どうなされた?」 渋滞にでもあったように、みやはけげんな顔。と思ったらなぜか人波を縫うように、道路の斜め前方めがけて走り出したのです。 「ちょっ!ラッシュどの、ラッシュどの!」 振り落とされそうなみやが、必死にしがみ着いていると、急ブレーキをかけたように彼女は突然止まりました。 「ア、アナタ…アナタハ、リョウチャンデショ!」 ラッシュのまんまるに見開かれた眼。そこにいたのは小さなパグ犬でした。どうやら二匹は知り合いのようです。 「お、おう、こりゃきぐうだ。やっぱりきてみるもんだな。しばらくじゃねえか。びじんのごしゅじんはげんきかい?」 これはたぶん高梨ママの事なのでしょう。ラッシュの元の飼い主はママ。高梨家に彼女が来たのは最近のことでしたから。 息を弾ませてやって来たラッシュに、パグちゃんは目を細めています。あっ、もともと彼らの種族は細いのか…。
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