おさんぽ

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「そいでな。いざ、のらになっちまうとよ。なんだかむしょうにおめえにあいたくなったんだよ。おぼえていることせいりして、ばすのいきさきなんかもみて、まよいまよいあるいてたんだ。そっからよ。そしたらな…」 「ワタシノコトオボエテテクレタンダネ。ウレシイ♪ソレデアルイテイタラ?」 「でっかいとらっくが、すんげえすぴーどではしってきてな。あっというまにひっかけられて、このざまさ」 「エッ…!」 このざまと言われてお嬢様は初めて気づいたようですが、リョウくんは体がところどころ透き通っています。無論みやは知っていましたが。 「みちのとちゅうだったし、なにがなんだかあたまがぐるぐるしてたんだ。すぐにひきとりのくるまがきて、のせられて、ほけんしょのやきばでおれ、やかれたらしいんだが、そのあたりのきおくがねぇんだよ」 「ソ、ソレジャア、アナタ…」 感極まったのかリョウくん、目を見開いて震えている彼女をしばし見つめていましたが、ため息ひとつ。静かにまた、語り始めました。 「それでもな。おれ、おめえのことあきらめきれなくてよ。そうさ、ゆうれいになってもしばらくそこらをうろうろしてたんだ。 でも、だんだんこのままじゃいけないとおもうようになってよ。 やっとみとめたんだ。おらあしんだんだってよ」 「ソ ソンナ…」 天に召される事もなく、こうして現世に未練を残して、所縁のある土地から離れない事自体、立派な地縛霊と言えるのですが、その立場を当の本人も分かっていないようです。 そして元友か、恋人か、突然に悲しい姿を見せつけられて、大柄なお嬢、ラッシュは言葉もありません。涙は止めどなく流れ落ちたのでありました。 皆さんは知らないでしょうが、こんな時、人も犬も変わりはないのです。 ただ常識と言うものが、見える目を曇らせているだけのことなんです。 みやも二匹に近ずいてはいましたが、その話に聞きいるにつれ、ますますその場から動けなかったのでありました。 うずくまるラッシュの背中に前足を当て、まるでつかまり立ちの様なリョウくん。震える肩のまま静かに慟哭するラッシュ。少し距離をおいて立ちすくむみや。
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