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「くっ、くそ…。なんてやろうだ、てめえは…。はあ、はあ…」
さすがにリョウくんはグロッキー気味。ラッシュは心配そうに両者を見つめる。
「話を聞かぬからじゃ!お主の気持ちは分かる。ラッシュ殿の気持ちもじゃ。だがの。出来ることと出来ぬことはあるのじゃ。
見たところお主はもはや亡くなっておるのじゃろうが、ラッシュ殿を見よ。姿がハッキリしておろう」
「んっ、そういえば、おめえ…」
「………」
思わずみやの後ろに隠れるラッシュ。ようやく彼は今の立場を理解したようです。
「われらは旅の途中なのじゃ。ラッシュ殿は亡くなってなどおらぬ。本来通れぬ道なれど、私の力でここを通ったに過ぎんのじゃ」
「えっ、ではおまえ…いや、あなたは?」
「うむ、ラッシュ殿の生きる世界で、神をやっておる者じゃ」
「へっ、へへぇー!」
確かに神と言えないこともないですね。
いくぶん後ろに反り返り気味のチビ神様に、パグ犬くんは平伏したのでありました。
「そういうことかよ…」
「ウン、ゴメンネ。アタシモマサカ、アナタトアウナンテオモッテナカッタシ…」
リョウくんは亡くなったパグ犬。ラッシュは現役のゴールデンレトリバー犬。
相入れない事実を、みやの叱責によって目の当たりにしたリョウくん。その打ちしおれ方は無残なものでした。
今度はラッシュが彼を慰める番に…。
犬猫始め鳥やハムスター、やフェレットなど、さまざまなペットたちの波がすり抜ける中、一人と二匹はまんじりともせず、そこにいました。
みやは目を閉じて、何事か考えている様子。
考えている。考えている。考えている。考えている。考えている。考えて………………………。
おっ、顔を上げたぞ!
「なあ、リョウ殿よ。お主、亡くなった今もラッシュ殿と一緒に居たいと思うか?」
不意に声を掛けられたパグちゃんが振り向くと、そこには慈愛に満ちた眼差しが。それは神様の表情でありました。
「おおとも。きくまでもねえはなしだろうが!
んなこたぁ。でもよ…
そりゃ、だめなことなんだろ?
しょうがねえやな…」
そう言ってまた、うつむくリョウくん。ラッシュが心配そうに前足で背中を撫で撫でしています。大きいので、押しつけている様ですが。
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