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要はわんこそばの要領で時間内に何杯食べられるかを競い合うだけであり、競技時間はきっかり10分。
実は大の辛い物好きである俺は小さくほくそ笑んだが、そんな余裕はすぐに掻き消えた。
ルール説明を終えて満足げな男がぐつぐつ煮えたぎる灼熱の鍋を部屋に持ち込むと、室内の温度は更にグッと上昇し、その存在感をいかんなく発揮する。
まるで血液のような赤赤とした液体に、溢れんばかりの唐辛子。
夏鍋なんてかわいげな名前からは想像もつかないようなゲテモノの登場に、額からはすでに滝のように汗が吹き出し、鍋の熱気により目からは涙が流れる。
・・・こんなもん本当に食えるのか?
口にはしないが誰もがそう思ったはずだ。
拷問に使用されてもおかしくないような唐辛子を唐辛子で煮詰めた唐辛子以外の何物でもない唐辛子汁が配膳され、それと同時に水の代わりに一杯づつの赤色の液体も用意された。
独特な刺激臭を放つその謎の液体は、辛さからの避暑地として設けられたものではないらしい。
競技開始のゴングと共に俺たち四人は一斉に唐辛子を貪り食らい始めたが、その様は傍から見ればまさに地獄絵図だったであろう。
時折辺りから悲鳴が上がるのに耳をふさいで闇雲に唐辛子を口に運ぶが・・・。
舌が取れるのではないか?
本気でそう思ったほどの痛みが口の中を襲った。
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