第1章

12/93
前へ
/691ページ
次へ
恵ちゃんの集中している姿。可愛い。脳みそではどんな感じで英語論文を読んでいるんだろう。想像するだけで嬉し楽しくなる。 「オレンジ色のこと書いてないね」 「うん」 大樹と義雄が研究室に入ってきた。 「おはようーっす」 「これ、読んで見て」 恵ちゃんが大樹に手渡す。 「もう、正も恵ちゃんも読んだんでしょ。内容だけ教えて、内容だけ」 いつも物事を飛ばし急かす、大樹らしい口ぶり。 「カーネーションの花の色の遺伝子型、いわゆるgenotypeは、YIASRMで示されるみたい」 「419ページの表2を見てみて」 「ここには、黄色、白、オレンジがないね」 義雄が呟く。 「僕らが知りたいのはオレンジ色。つまり黄色と赤色の混合した形態」 「赤色は、YIASrm。R遺伝子が劣勢だからペラルゴニジンという色素になり、M遺伝子も劣勢だから糖が一つしかついていない」 「有田先生の言う、ペラルゴニジン3マリルグルコシドだね」 「まず、赤色はOKだね」 「さて、黄色」 「429ページにあるように、濃い黄色は、推定遺伝子型が、Yiaになっている」 「y遺伝子、i遺伝子、a遺伝子が劣勢の場合は、薄い黄色や白になると書いてある」 「y遺伝子が劣勢だと、アントシアニンは生成されないらしい」 義雄が言う。 「ちょっとややこしいね」     
/691ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加