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第4話
「今日は恵ちゃん遅いね」
「寝ぐせ直しに時間がかかっているんじゃない?」
大樹が言う。
「それはない。いつも、そのままでくるじゃん」
義雄が呟く。
「さて、やるか」
僕が席を立つと、大樹も義雄も自分の研究に取りかかり始めた。
昨日、有田先生がバラの野生種の葉のサンプルを取って来てくれたので、今日は電気泳動の実験をする。
電気泳動のゲル作り、酵素の抽出、電気泳動。
アイソザイムという、酵素多型の研究だ。
簡単にいうと、酵素とは、同じ働きをしていても、そのタンパク質組成が異なる場合がある。パーオキシターゼという植物体内に生じる過酸化水素を分解する酵素がターゲット。
酵素を抽出して、ポリアクリルアミドゲルに乗せ電気泳動し、その後染色すると、その組成の分子量の違いから、ゲル上に縞模様のようなバンドが得られる。その縞の位置、太さ、数の情報を得る。
バラの野生種の産地や種類で、共通なもの、また異なるバンドなどの情報が得られる。
それらを互いに比較し、統計解析をすることで、野生種の近縁度や遺伝子変異の多少が確認される。
「有田先生、今日泳動、流します」
「佐藤くん、ちょっといいかな」
「何でしょう?」
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