第1章

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「おっ、ケーキだね。恵ちゃん作ったの?」 「はい」 有田先生が、親指と人差し指で顎をつまみ笑顔で研究室に入ってくる。 「イチゴの赤の色素はアントシアニンが複数入っていて、確か、カーネーションと同じかどうかわからないけど、ペラルゴニジン3グルコシドも入っているはずだよ」 「そうなんだ。面白いですね。花の色にあり、果物の色にもあり」 恵ちゃんが不思議顔で呟く。 「先生、オレンジ色のイチゴはありませんよね」 「恵ちゃん。見たことある?」 「無いです」 「実はね、美味しいイチゴの色は真っ赤ではなく、ほんのりとオレンジがかった色になるんだ。いちご本来の甘さと適度な酸味があり食感が良いいちごの印」 「でも、カーネーションのような爽やかなオレンジ色じゃ無いよ」 「カーネーションのようなオレンジ色のイチゴがあれば、ニンジンの味がするのかしら?」 「恵ちゃん。どこからそんな発想出てくる?」 僕は笑いながら、そんなことが口から出る、恵ちゃんが可愛らしくて仕方ない。
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