第1章

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第5話 「あのね。ドリップ式のインスタントコーヒーも持って来た」 「今入れるね」 恵ちゃんがコーヒーカップを5つ準備し、袋の上側を開け丁寧にお湯を注ぐ。 大樹が唸る。 「ケーキ、すっごい美味しい!」 「コーヒーも最高の味だね。研究室のインスタントコーヒーが飲めなくなるよ」 恵ちゃんは、にこにこ微笑む。 「中のクリームのところも、甘いイチゴがぎっしり」 「恵ちゃん、嫁にしたいよ」 大樹は、なんでも物事をストレートに言う。ある意味羨ましい。 僕も義雄も恵ちゃんが好きだが、そんなこと言えない性格。 「やろうか。赤いカーネーションと黄色いカーネーション調べ。そしてオレンジ色」 大樹は調子が上がっている。 「おじさんには連絡しといた。母の日までは生産しているカーネーションには手をつけられないけど、育種ハウスにあるものはサンプルを取っても構わないって」 「母の日が済んだら、栽培しているハウスの花も6月初めまでは取り放題」 「僕と恵ちゃんは花色の分析だね」 恵ちゃんも、うん、と首を縦に振る。 「一応、何グラムの乾燥花弁というふうに重量を決めてサンプル準備しようね」 「分析では色素の量的なものも比較したいから」     
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