第1章

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「了解。俺は正のおじさんのところに行ってサンプルを取ってくる役だね」 「義雄は遺伝子の推定や解析だね」 大樹が仕切る。 義雄が話し始める。 「了解だけど、一筋縄ではいかないかもしれない」 「花の色素を作るフラボノイド生合成系に関わる遺伝子を調べ始めたんだけど、赤色になる理由は、バッチリ調べられている」 「ただ、黄色なんだけど、どうやら黄色になるのはCHI遺伝子、カルコンイソメラーゼという遺伝子が壊れている、あるいは無いのかもしれないんだ」 「そして、カルコンに糖をつける遺伝子、つまりカルコン配糖化酵素は解っていない」 「義雄、オレンジ色は?」 「どうやら、カルコンが、CHI遺伝子を通過しない、スポンテニアス・イソメラゼーション、すなわちCHIの働きなしに直接色の付く生合成経路にスポンテニアス、日本語でいうと自発的、自然的なという意味だけど、飛び越える場合があるとか、CHI遺伝子が壊れているけど、完全な働きじゃなくても、いくばくかはカルコンが色の付く生合成経路に流れていく、そんな説明がなされている」 「それで赤色ができると、黄色と赤色が混じってオレンジ色になる」 「なるほどね」 僕は呟く。 「ものごとの順序からいうとオレンジ色の云々の前に、カーネーションの黄色花とCHIの調査が最優先だね」     
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