第1章

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僕ら4人は、東名大学農学部の4年生。入学時に40人いた僕たちのクラスは、麻雀やパチンコにハマったやつ、友達同士の付き合いがうまくいかなかったやつなど7人が退学している。33人の級友は8つの研究室に配分され、僕ら4人は花卉、野菜、果樹などを研究する園芸学研究室を選んだ。今年は、珍しく4人とも花卉。 僕と、同級生の林大樹、鈴木義雄は、恵ちゃんが持ってきたカーネーションをじっと見つめる。 「よく考えると俺、オレンジ色のカーネーション、初めて見たかもしれない」 大樹が呟く。 林大樹。身長が高くがっしりとしたからだ。話好き。眉毛が濃く軽い天然パーマのソース顔。大樹を好きな子が他の研究室にいるのだが、彼は恵ちゃんが好き。 サークルは軽音楽部。ロック一筋、ドラムを叩く。 「俺は見たことあるよ。都内の駅構内のフラワーショップのブーケに入っていた」 鈴木義雄。マジメ一筋な男。顔立ちは女の子受けしないが優しい。その優しさのファンの子もいるらしいが付き合っている子はいない。やはり、恵ちゃんの魅力の虜。 どこのサークルにも入っておらず読書好き。シュールレアリスムがお好み。 「僕は知っているどころじゃないよ。おじさんがカーネーション農家をしていて、品種開発、すなわち育種もしてる。カーネーションの花色、模様などの組み合わせで、百通りくらいの種類があるんだよ」     
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