第1章

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ケーキを食べ終えた有田先生がアドバイスをくれる。 「まあ、頭でゴタゴタ考えていないで、先ずは正のおじさんのところからサンプルを頂いて来てみよう」 「そうそう」 大樹がふんぞり返り偉そうな口調で話す。 「いつにする?」 有田先生がこめかみをさすりながら皆に問いかける。 「明日にしよう、明日」 大樹がまた仕切る。 「分かった、僕からおじさんに連絡しておくね。最初は皆で行こう。驚くよ、育種ハウスなんか見たら」 「僕も行ってもいいかな?」 有田先生も興味があるらしい。 「いいですよ」 僕は先生にも見て欲しい。 「大樹くんと義雄くん、卒業研究の方は大丈夫?」 有田先生が二人に問いかける。 「僕は今日、またバラの花粉、電子顕微鏡を覗きます。写真を撮っておしまいの作業ですから」 「系統分類は、100位の花粉の写真が出揃った頃から始めます」 「僕は、カーネーションとかすみ草のプロトプラストを取ってありますから、細胞融合してみます」 「そう言えば、義雄くん面白い造語作っていたよね。カスミネーションだっけ?」 「そう。かすみ草の形態に、小さなカーネーションのような色とりどりの花が付く。新植物ができないかなと」 「いいかい、義雄くん」 「その細胞融合を卒論のテーマの主に置いちゃダメだよ。失敗の要素が大きすぎる」 「先生、分かってますよ。論文は組織培養による植物のウイルスフリー化を中心にして、細胞融合はチャレンジした、と言うストーリーにします」     
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