第1章

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「だから言ったじゃない」 呆れ顔。 仕方がない。路肩に車を止め立ち小便。 恵ちゃんはため息をついて、反対側の窓から外を見つめる。 「さて、着きましたよ」 有田先生が車を止める。 おじさんが丁度ハウスから出てくるところ。 「佐藤さん、お久し振りです」 「やあ、有田先生。本当、久しぶりだねえ」 「あれ、先生、おじさんと知り合いだったんですか」 「僕が大学に助手で入って間もない頃、挨拶にだけ来たことがあるんだ」 佐藤宗男、還暦を迎える今年60歳。身長は180cm近く、大柄でしっかりとした体型。僕は体型はともかく、身長は少しおじさんの遺伝が欲しかった。 「正、そしてお友達もご苦労様」 「こんにちは」 皆で声を合わせて挨拶する。 「皆さん、まずはお茶でも飲みますか?」 恵ちゃんが大樹を見つめてからかう。 「お茶でも飲みますか?」 みんなで爆笑する。 ーーーーー 「そうかい。オレンジ色の秘密かい」 おじさんが話し始める。 「俺のパチンコ育種では、なかなか爽やかなオレンジ色が出ないんだ。いや、出たことがない。薄い、くすんだようなオレンジ色はよく出てくる。でもその花には、赤い縞の模様みたいのが必ずと言っていいほどついてくるんだ」     
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