第1章

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「だから、爽やかなオレンジ色のは種苗会社を通して買ってる。イタリアで育種されたものらしい」 大樹が尋ねる。 「パチンコ育種ってなんですか?」 「はっ、はっ、はっ」 おじさんが笑う。 「皆知っているよね。営利用のカーネーションは種から栽培するものじゃなく、苗から栽培するものなんだ」 「いわゆる、栄養繁殖性植物」 「種苗会社では、例えば一つの品種を、健全な母株から出るわき芽を取り、増やしていき、何十万株にも増やして農家に販売するんだ」 「中には、オランダから輸入されて販売されている苗もある」 「ほとんどの人は、種苗会社の営利品種の苗を購入する」 「種苗登録された品種は、勝手に苗を増やすことは禁止されているし、何万本も一農家で一度に準備することはできないでしょ」 「バラや菊と同じですね。栄養繁殖」 義雄が話し始める。 「ただ苗をどんどん増やして栽培していくうちに、ウイルスに罹病して生産性が落ち込んだり、場合によっては花や葉に病状を示したりするんですよね」 「僕は今、そのウイルスフリー株を好条件で維持管理し、効率よく繁殖させる技法を研究しているんです」 「俺もそこは、一部種苗会社さんに手伝ってもらっているんだ」 「大学とかでより効率の良い方法が見つかると大いに助かるね」 「よろしく頼むよ」     
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