第1章

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茶色、くすんだ紫色、暗い暗赤色、ショッキングピンク、グリーンなどのスタンダード大輪系、普通のピンクとニュアンスの違う透き通るような明るいピンク。そして、僕らの研究ターゲットの爽やかなオレンジ色の大輪。 しかし、花色の種類、花模様の種類が豊富だ。普通の、赤、白、ピンク、黄くらいかと思いきや、おじさんの生産用ハウスには、十数種類の珍しい花色、花模様のものが栽培されている。 「これ、3分の2くらいオリジナル品種なんだ」 「おじさんが育種したやつ?」 「そう。パチンコ育種だよ」 おじさんは笑顔。 「こんな普通の花屋じゃ売っていないようなカーネーション。どこに卸しているんですか」 恵ちゃんが興味深げにおじさんに問いかける。 「青山や渋谷の花屋で販売してる。もちろん市場は通すよ、ルールだからね」 「特化した花屋、フラワーアレンジメンターの人たちと契約しているんだ」 「だから、その人たちに育種ハウスを見せて、花色の選抜をしたりもしてもらっている」 「ニーズを追いつつ、ウォンツ、すなわち、こんなものが欲しかった、と言う市場を発展させるんだ」 「そうなんですか。ほんと、素敵な花ばかり。見とれちゃう」 「ちょっと待ってね」 おじさんが、数種類の花色の花を組み合わせてブーケにして恵ちゃんに手渡す。 「わあ! 素敵! ヨーロピアン調ですね。特に薄茶色、セピアカラーの花が優しい。グリーンも素敵」     
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