第1章

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第7話 「さて、ここが育種用ハウス」 おじさんが、少し嫌なきしむ音のするハウスのドアを開ける。 恵ちゃんはその音を聞いて、ぶるっと震えた。 「恵ちゃん、おしっこ漏らしたんじゃない?」 大樹が話すと、 「大樹くんだけには言われたくないわよ」 皆で笑いながらハウスに入る。 50坪くらいの大きさだろうか。栽培しているカーネーションのハウスとは全く趣が違う。まず目に飛び込むのは花弁のない子房の元につけられた、たくさんの小さなラベル。どれも数字が書いてある。 次に、生産用ハウスでも見られないような不思議な花色、花模様の素材。また、普通の花屋さんで見られるような素材もある。大げさではなく、百以上もある花色、花色パターンの花が咲いている。 僕はおじさんに尋ねる。 「ここには色々な種類の花色のカーネーションがありますね」 「普通の花屋で見かけるピンク、赤などもあるし」 「そう、ここには150種類くらいの育種素材を植えてあるんだ」 「普通色のカーネーションも、生産性が高いとか、病気に強いとか、交配親として優れているという特徴のものは置いてある」 「各々、12株から30株くらい植えてある。花粉の出やすい、出にくいものがあるからね」     
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