第1章

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僕は、佐藤正。中肉中背。身長は170cm。モテ顔ではないしょうゆ風。おっとりした性格。趣味はクラシック音楽。サークルはオーケストラでホルンを吹いていたが、もう四年生。サークルには足を運ばなくなった。 恵ちゃんが花をまじまじと見つめる。 「どうしてオレンジ色になるんだろうね」 興味を持った時の恵ちゃんの不思議顔は言葉にできないくらい可愛い。クリクリとした目で隅から隅まで穴のあくほど対象物を見る。皆がその可愛らしさの虜になってしまう。 「簡単さ。オレンジ色の色素が花弁にあるんじゃない」 「キク、バラ、カーネーション。三大花卉の一つだよ」 「もう解っているに決まってるさ」 「はい。おしまい」 大樹は席を立ち、アイスコーヒーを人数分持ってきてくれた。 「ねえ。みんなで自由研究してみない」 恵ちゃんが話し始める。 「何?」 僕が問いかける。 「あのね。実はカーネーションにはオレンジ色の色素というのはないらしいの。さっき図書館で本を読んできた」 「オレンジ色のこと。あまり分かっていないの」 「中間色という表現で、文書や写真には乗っているけど」 大樹が話す。 「でもね、カーネーションだよ。世界中で何世紀も知れ渡っている花だよ。解ってるよ、きっと」 「論文を探せば、山ほどその秘密が書かれているよ」 僕も大樹の話に別方面から継ぎ足しする。     
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