第1章

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「義雄さあ。そういえば論文に書いてあったんだけど、赤とか有色のアントシアニンを作るためのDFRという遺伝子が壊れた場合には、フラボノールと呼ばれる無色の色素がたまるというようなことが書かれていた」 「正の言うことを勘案すると、黄色だけになるやつもいれば、黄色が溜まり、かつCHIを何らかの方法で通り抜け、DFRでブロックされてフラボノールにより薄められ、薄い黄色になるものもいる」 「そう言うことかな?」 有田先生が感心する。 「義雄くんの推理はすごいね。その点に注目して研究を進めると面白そうですね」 「なーに。恵ちゃんと大樹、何やってるの」 「丈夫な女の子が生まれました」 恵ちゃんのポケットから取り出した花全部。花色や花柄を組み合わせ、二人して遊んでいる。 「恵ちゃん。DFRとかの話聞いてた?」 「何それ?」 「ほーら、聞いてない」 「ちゃんと知っているわよ。ジヒドロフラボノール 4- 還元酵素遺伝子でしょ。遺伝子型はYIASRMのA。優勢だと、赤とか紫とかできる。論文読んだもん!」 「何だ、恵ちゃん知ってるじゃん」 「大樹は?」 「何々、それ」 「ほーら。恵ちゃんのせいだ。妊娠しただの、女の子だのはしゃいでいるから、大樹のバカがさらにバカになる」 「私のせいじゃないよ」 「大樹さ。義雄から、ちゃんと納得いくまで話を聞いてくれな。みんなで情報を共有してオレンジ色の秘密を探るんだから」 「恵ちゃんも」     
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