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第108話
「皆んな揃っているか?」
浅野教授が相変わらず鼻息を荒くして研究室に入ってくる。
「正がいません」
「正?」
「どこいった?」
「教授にも話していたと思いますが、おととい日光、昨日日光、今日も日光です」
「そりゃ結構だ。何してるんだ? ヤツは」
苛立った口調。
「まあ……、いろいろな経緯がありまして」
「これ。提出する論文の校閲が済んだ」
「皆んなで熟読して、変更箇所があれば知らせてくれ」
「正にはPDFで送って、今日の夕方までに返事をよこすよう連絡してくれ」
「夕方6時頃から、論文最終チェック、読み合わせを行う」
「正が帰ってきたら合流させる」
「はいっ!」
浅野教授は、独り言のようにブツブツ正の文句を言い教授室に帰る。
これが、大樹や義雄なら大惨事だった。ただでは済まない。
「恵ちゃん。正への連絡よろしくね」
「いいわよ」
恵ちゃんは、論文をPDF化する。
『お楽しみのところごめんね。教授が今日、夕方までにこの論文のチェックを済ましてくれとのことです』
『私たちも頑張るけど、やはり正くんが頼り』
『念入りにチェック願います。よろしくね』
P.S. 『もし無理なら、私たちでなんとかするけど……』
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