第4章

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第108話 「皆んな揃っているか?」 浅野教授が相変わらず鼻息を荒くして研究室に入ってくる。 「正がいません」 「正?」 「どこいった?」 「教授にも話していたと思いますが、おととい日光、昨日日光、今日も日光です」 「そりゃ結構だ。何してるんだ? ヤツは」 苛立った口調。 「まあ……、いろいろな経緯がありまして」 「これ。提出する論文の校閲が済んだ」 「皆んなで熟読して、変更箇所があれば知らせてくれ」 「正にはPDFで送って、今日の夕方までに返事をよこすよう連絡してくれ」 「夕方6時頃から、論文最終チェック、読み合わせを行う」 「正が帰ってきたら合流させる」 「はいっ!」 浅野教授は、独り言のようにブツブツ正の文句を言い教授室に帰る。 これが、大樹や義雄なら大惨事だった。ただでは済まない。 「恵ちゃん。正への連絡よろしくね」 「いいわよ」 恵ちゃんは、論文をPDF化する。 『お楽しみのところごめんね。教授が今日、夕方までにこの論文のチェックを済ましてくれとのことです』 『私たちも頑張るけど、やはり正くんが頼り』 『念入りにチェック願います。よろしくね』 P.S. 『もし無理なら、私たちでなんとかするけど……』 ーーーーー     
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