第4章

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「あっと、メールだ」 スマホのメール着信音が鳴る。 「誰からでしょう?」 「恵ちゃんからだね」 「やれやれ、ヤキモチメールですか」 「こりゃ大変だ」 「どうしました?」 「いや、論文の英文校閲が済んだので、すぐに最終チェックしてくれとの連絡だ」 「おいおい、大変だな」 隆が心配してくれる。 「困ったね……」 こずえちゃんがちらりとメールを覗き込む。 「恵先輩。私たちでなんとかするとも書いてあるじゃないですか」 「他人の全員に、ありがたく甘えてください」 「他人の善意? そうはいかないよ」 僕は頭の中を整頓する。 いい手はないものか……。 「そうだ、隆。華厳の滝は僕抜きで向かってくれる?」 「僕はその間、市内の喫茶店で論文チェックしている」 「いいよ俺は。こずえちゃん、それでいい?」 「残念ですが仕方ありません」 珍しく、こずえちゃんが素直に頷く。 「そのかわり……」 「そのかわり? ……」 「論文打ち合わせ終わったら、夜食 de デートしましょう」 「そうきたか」 「はい。そうきました」 「多分無理だよ。論文の最終打ち合わせが長引くかもしれない」 「夜、少し遅くなるよ」 「でも、晩御飯は食べますよね?」 「ああ、もちろん。でも……」 「恵先輩ですか?」     
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