第5章

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第113話 「論文の打ち上げは、今月末の正の誕生日にしようか?」 義雄が話を切り出す。 「でも誕生日。恵ちゃんと二人っきりでいいことしたいんじゃない? 正」 「ぜーんぜん。私たち、いつでも……」 恵ちゃんが大胆な発言を言いかけて止める。 言った言葉は取り戻せない。恵ちゃんは顔を赤らめる。 「じゃあ、決まりだね。打ち上げは正の誕生日」 「日光は?」 「それが問題だ。梅雨明けにしよう」 「何となく、サンサンと輝く日の光の下の方が、ジメジメした空と気分の下よりいい」 「教授の心もsun、sunとお日様のように晴れるはずだ」 大樹がダジャレを交え呟く。 「散々と酷いことにならなければいいけど」 「恵ちゃん、そんな縁起の悪いこと言わないでよ」 大樹はソワソワして話す。 「急ぐ必要はないんだから、学会のプレゼンがおおよそ出来てからにしよう」 「7月中下頃かな?」 「それなら、僕も行くよ」 「正が一緒ならものすごく助かる!」 「ウバユリ、ヤマユリの見所の時期だね」 「じゃあ、7月20日。この日にしておいて、教授の都合に合わせ日程を調整すればいい」 「大樹、頼むよ」 「ああ」 「ほら、決まった。思い立ったらすぐ決めなきゃ」 時計の針は8時半過ぎ。     
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