第5章

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「じゃあ、帰ろうか」 「晩御飯、どうする? 皆んなで食べようか?」 「……」 僕と恵ちゃんはうつむく。 「はいはい」 「俺は義雄と牛丼でも食べに行くよ」 「正は恵ちゃん、お持ち帰りね」 ーーーーー 「恵ちゃん、何にする?」 僕と恵ちゃんはイタリア料理店へ。 「初めは熟成ミラノサラミかな」 「何かオススメのいいワインある?」 「あれ? 箱入り娘さん、お酒大丈夫なの?」 「うん。今日は論文打ち合わせで飲んで遅くなると連絡しておいたから」 「じゃあ、ドルチェット・ダルバにしようか」 テーブルに、ミラノサラミとワインが運ばれてくる。 ダルバは、酸味と渋みのバランスが完璧で、舌触りはまるでビロードのようにきめ細かい。 「はちみつやスミレの花を思わせる華やかな香り、そしてこのミネラル感がいいわね」 恵ちゃんは満足げ。 「恵ちゃんは、アイリスの香りがする」 「あら、正くん、お気に入りでしょ? 後ほどね」 「さて、何にしよう……」 恵ちゃんはメニューとにらめっこ。 「マルゲリータピザのWチーズ、辛味チキンというところかしら」 「うん。それでいいよ」 ピザはもちろん美味しい。チーズもたっぷり。 スパイスで味付けした、ジューシーでサクッとしたチキンの皮の食感もたまらない。     
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