第5章

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第114話 「この蒸し暑い梅雨時期の朝っぱらから、そのスキーウエアは普通の人が見たら気が違っていると思われるレベルだね」 義雄が研究室に来るなり一言。 「仕方ないよ。サンプルが5日分溜まってる」 「おはよう」 恵ちゃんがやって来る。 「あら、正くんこんな早くから?」 「うん。いつもより1時間前に来て実験開始」 「今日は、これから4時間の電気泳動2回、8時間強の試練だよ」 「明日も、明後日も……」 「大遊びした後だもんねー」 恵ちゃんが僕をおちょくる。 「でも、スタミナは十分よね。私知ってるよっ」 恵ちゃんは昨日の夜に素敵に乱れた。満面の笑み。 義雄はこの場に居づらそうな顔をする。 「じゃあ。マイナス10℃の世界に行くよ」 酵素抽出であれば、室温2ー5℃くらいでいいものを、丁度いい温度の実験室が農学部には無い。 室温29℃。低温室との30℃差の温度差は正直きつい。 「私は、極楽の花園、蝶よ花よのラン温室に行くからねー」 恵ちゃんが昨日の夜を思い出させる仕草、ポンポンお腹を叩いて外へ出る。 おいおい、昨日は付けるもの付けたじゃないか。 お腹の中に僕の分身はいないよ。 女の子って、いや、恵ちゃんって可愛い。 義雄も培養室に向かう。     
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