第5章

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「その際反応基質としてはアントシアニンの生合成経路の中間代謝産物などを用いた。この酵素液について、TLC分析、HPLCおよび14CUDP-グルコースを用いた液体シンチレーターによる分析を行った」 「その結果、カルコノナリンゲニンを基質とし、Ch 2'Gを生成する2'GT は2種類存在することがわかったんだ」 「単離したDcGT2(D)およびDcGT3(H)は、カルコンからCh 2’Gへの変換反応を触媒することが確かめられた」 「すごいじゃない!」 恵ちゃんが喜ぶ。 「ああ」 「今回提出した論文には間に合わなかったけど、これも早めに論文を書いて7月末締め切りの学会資料には組み込むことができると思う」 「教授や有田先生には報告した?」 「いや、まだこれから」 「今、資料を整頓してる」 「義雄。Tシャツの胸にある<シナリオ通り>だな」 「うん」 「みどりちゃんとはうまくやってるか?」 「ああ。今日も二人で食事した」 「やるじゃん! 義雄」 「なんだか、みどりちゃんがいると、いいことだらけなんだ」 「みどりちゃんも、僕のこと嫌がらないし」 義雄が少し自信ありげな顔をする。 これは、大丈夫。脈ありだ。 「どう、お祝いに今日軽く飲み屋でも」 「そうだね、飲み屋とはいかなくても、喫茶ジャルダンでビール会でもしようか」 恵ちゃんがスマホをいじる。 「OK。家は大丈夫。私も飲み会に参加する!」 「大樹。歩ちゃんは?」 「ちょと待って……」     
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