第1章

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「あのさ、正君。でも不思議じゃない? 黄色は黄色、赤は赤のままでいいのに、なぜ液胞内で別々の色素なのに共存しているの?」 「僕、ついでに、ペラルゴニウム、いわゆるゼラニウムの花の色と色素についても見てみたんだけど、ペラルゴニジン、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジン の6種類の色素が共存しているものもあったりするんだよ」 「分かるわよ。でもそれ全部アントシアニンじゃない。有色色素の共存は、いろいろあってそれでいい」 「でもカーネーションでは、カルコン色素のカルコンとアントシアニン色素のペラルゴニジンの共存よ。何か変」 「どこが変なの?」 「だって、カルコンはアントシアニンを作る過程の素みたいだから、カルコンがいるということと、赤いアントシアニンがあるということ自体がつじつまが合わない訳よ」 「おはよう」 大樹がやってきた。 「おはよう、大樹君。これ」 恵ちゃんが試験管を大樹に優しく手渡す。 なんだろう? 恵ちゃんが誰かにしてあげる仕草全てが気になってしまう。”好き”だから……。僕自身、良く分かっている。 「綺麗じゃん。これで何かわかった?」 「大樹、これでは何も解らないよ。色素を抽出しただけだから。しかも適当に70%メタノールで」 「おーっす」 義雄もやってくる。 「これね、オレンジ」     
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